新株予約権の税務上の留意点

新株予約権、ストックオプションの実務 | 2017年6月19日

今回は、弊社オリジナルの連載特集【新株予約権、ストックオプションの実務】第6回目をお届けいたします。

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1.はじめに

ここでは、新株予約権の税務上の留意点を解説します。新株予約権は個人が取得する場合と、法人が取得する場合があり、それぞれ有償による取得、無償による取得がありますが、特に「個人」が「無償」で取得する場合は、税制適格ストック・オプションにあたるか否かにより、税務上の取扱いに差が生じます。そのため、ここでは主として「個人」が「無償」で取得する場合を想定して解説したいと思います。

 

2.個人による新株予約権の取得の課税関係

個人に新株予約権(ストック・オプション)が付与された場合、当該新株予約権が税制適格ストック・オプションにあたるかについて、まず検討する必要があります。

 

①税制適格ストック・オプションの要件

 

税制適格ストック・オプションにあたる新株予約権の発行については、租税特別措置法29条の2において、以下のような要件が定められています。

 

まず、税制適格ストック・オプションの付与を受けることが可能な対象は以下のように限定されています。

 

 

・  発行会社及び子会社(50%以上を直接又は間接保有)の取締役、執行役若しくは従業員、権利承継相続人のいずれかであること。

・  大口株主及び大口株主の特別関係者ではないこと。

 

また、ストック・オプションの発行時(付与時)には、以下のような主な要件が定められています。

 

・  行使は、当該新株予約権に係る付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと。

・  行使に係る一株当たりの権利行使価額は、当該新株予約権に係る契約を締結した株式会社の株式の当該契約の締結の時における一株当たりの価額(時価)以上であること。

・  譲渡が禁止されていること。

・  行使により取得をする株式につき、当該行使に係る株式会社と金融商品取引業者等との間であらかじめ締結される新株予約権の行使により交付をされる当該株式会社の株式の振替口座簿への記載若しくは記録、保管の委託又は管理及び処分に係る信託に関する取決めに従い、政令で定めるところにより、当該取得後直ちに、当該株式会社を通じて、当該金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は当該金融商品取引業者等の営業所若しくは事務所に保管の委託若しくは管理等信託がされること。

・  金銭等の払込みを伴わないこと。

 

以上の要件を充たした上で、ストック・オプションを行使して株式を取得する際は、以下の要件も充たす必要があります。

 

・  行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、1,200万円を超えないこと。

・  付与決議の日において当該株式会社の大口株主及び大口株主の特別関係者に該当しないこと、及び行使した年における他の特定新株予約権等の行使の有無について書面を提出すること

 

上記の要件を充たすと、税制適格ストック・オプションとして取り扱われます。また、以上の他に税法等において定められた所定の書類も準備する必要があります。

 

②ストック・オプションの課税上の取扱い

 

(1)税制適格ストック・オプション

税制適格ストック・オプションとして認められると、ストック・オプションの取得時(付与時)のみならず、ストック・オプションを行使して株式を取得した際の経済的利益に対しても、所得税は課税されないことになります(租税特別措置法29条の2)。

しかしながら、ストック・オプションにより取得した株式の譲渡時は、通常の株式の譲渡と同じく、売却益(権利行使価格と売却価格の差額)は譲渡所得として扱われ、所得税が課せられることになります。

 

(2)税制非適格ストック・オプション

税制適格ストック・オプションとして取り扱われないストック・オプションは、ストック・オプションの取得時(付与時)には、所得税は課税されないものの、ストック・オプションを行使して株式を取得した際の、経済的利益(権利行使価格と権利行使時の時価(上場企業の場合は株価)の差額)は給与所得等として取り扱われ、所得税が課税されます。

また、ストック・オプションにより取得した株式の譲渡時は、税制適格ストック・オプションの場合と同じく、譲渡所得として所得税が課せられることになります。

 

(3)両者の違い

税制適格ストック・オプションと税制非適格ストック・オプションは、いずれも最終的には売却価格と権利行使価格の差額に対して所得税が課せられることになりますが、税制適格ストック・オプションは、差額の全てが譲渡所得として取り扱われるのに対し、税制・非適格ストック・オプションは、行使時の経済的利益が給与所得等として取り扱われることに差があります。

 

給与所得の税率は累進税制が採用されており、個人の所得によっては最高税率が50%になる可能性があります。一方で、譲渡所得は分離課税が行われ、税率は最高20%程度となります。このため、行使時の経済的利益の金額の大きさによっては、納税額に大きな差が出る可能性があります。

 

3.個人による新株予約権の取得の課税関係

新株予約権を法人が取得した場合、有価証券の取得として処理されますが、それが時価発行であるか、有利発行又は役務の提供に対する対価として付与される場合であるかにより、取扱いに差が生じます(所得税法施行令109条)。

 

時価発行である場合は、新株予約権の取得時(付与時)には課税関係が生じず、また権利行使時も新株予約権の取得価額に取得費用を加算した金額になります。また、株式譲渡時は、帳簿価額と売却価額の差額が売却益として法人税の課税対象となります。

 

一方、有利発行又は役務の提供に対する対価として付与される場合は、新株予約件の取得時(付与時)には課税関係が生じない点は、時価発行の場合と同じですが、権利行使時には権利行使時の時価(上場企業の場合は株価)と権利行使価格との差額が利益とみなされ、法人税の課税対象となります(所得税法施行令84条、109条)。また、株式譲渡時は、時価発行の場合と同じく、帳簿価額と売却価額の差額が売却益として法人税の課税対象となります。

 

4.まとめ

新株予約権の税務上の取扱いの基本的な考え方は上記によりますが、近年、複雑な条件での新株予約券の発行も相次いでおり、一義的に取扱いを定めることは難しい面もあります。税務上の取扱いを誤ると、多額の課税が生じるのみならず、追徴課税が生じるリスクもあります。

このため、実務上は慎重な検討が求められます。

 

では、今回はこの辺で失礼いたします。お読みいただきありがとうございました。

 

 

第1回 新株予約権って何?ストックオプションって何?
第2回 新株予約権を導入する意義(メリット・デメリット)
第3回 新株予約権を発行する際の会社法上の手続きの留意点
第4回 新株予約権を発行する際の金商法上の手続きの留意点
第5回 ストックオプションに関する解説
第6回 新株予約権の税務上の留意点(今回)
第7回 新株予約権の会計処理
第8回 新株予約権の評価方法

 

 

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