表示方法の変更があった場合の取扱い

過年度遡及修正会計基準の解説 | 2013年11月22日

今回は、弊社オリジナルの連載特集【過年度遡及修正会計基準の解説】第3回目をお届けいたします。

 

 

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この連載は、過年度遡及修正会計基準の解説を行うことを目的としたものですが、今回は、「表示方法の変更」について、及び「表示方法の変更」をした場合にどのように対応しなければならないかを解説したいと思います。

 

 

1.はじめに

 

ここでは表示方法の変更について解説します。「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号)」(以下、「過年度遡及修正会計基準」)における会計方針の変更と表示方法の変更は混同されがちですが、今回は両者の相違についても解説を行います。

 

 

2.表示方法の変更

 

(1)    表示方法とは

 

「過年度遡及修正会計基準」において、「表示方法」とは、「財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法(注記による開示も含む。)をいい、財務諸表の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれる。」(過年度遡及修正会計基準4項)とされています。一方、「会計方針」とは、「財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいう。」(同4項)とされています。

 

これらの定義から、会計方針が財務諸表の作成の過程で行われる数値の算定の方法についての方針であるのに対し、表示方法は数値が算定された後、その数値をどのような形で開示するかについて定めたものといえます。

 

具体的には、数値を他の科目とまとめて表示するか、又は別掲するかという選択や、関連する貸方科目と借方科目について、総額表示を行うか、又は相殺して純額表示を行うのかという選択等を、表示方法として決定することになります。

 

【表示方法の選択の例(建物の減価償却累計額について総額表示か、純額表示か)】

 

a 総額表示の場合

 

建物          500

建物減価償却累計額  △100 

建物(純額)      400

 

b 純額表示の場合

 

建物          400

※ 減価償却累計額 100については注記により開示する

 

(2)    表示方法の変更

 

①     表示方法の変更が認められる場合

 

「表示方法の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することとされています(同4項)。

 

表示方法は原則として、毎期継続して適用することが求められます。しかしながら、表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合(同13項)、は当然にして表示方法の変更が認められます。またそれ以外でも、会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合(同13項)は、表示方法を変更することが認められます。

 

②    財務諸表の組替え

 

有価証券報告書等の開示書類では、当期の数値とともに過去の数値も比較情報として開示が行われますが、表示方法が変更された場合に、前期の数値を前期と同じ表示方法のままで開示すると、当期と過去の表示方法が異なることになり、比較が困難になる可能性があります。

 

このため、表示方法を変更した場合、「財務諸表の組替え」を行い、新たな表示方法を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理することが求められます。

 

③     財務諸表の組替えが不可能な場合

 

表示方法の変更が行われた場合は財務諸表の組替えが求められますが、表示方法の変更に関する原則的な取扱いである財務諸表の組替えが実務上不可能な場合には、財務諸表の組替えが実行可能な最も古い期間から新たな表示方法を適用することが認められます。

 

財務諸表の組替えが実務上不可能な場合としては、以下の3つのケースが認められています(同8項)。また、会計方針の変更の際も同様のケースでは、実務上、遡及適用が不可能な場合として認められます。

 

(ア) 過去の情報が収集・保存されておらず、合理的な努力を行っても、遡及適用による影響額を算定できない場合

(イ) 遡及適用にあたり、過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合

(ウ) 遡及適用にあたり、会計上の見積りを必要とするときに、会計事象や取引(以下「会計事象等」という。)が発生した時点の状況に関する情報について、対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能であったものと、その後判明したものとに、客観的に区別することが時の経過により不可能な場合

 

これらは財務諸表の作成を行う企業等の実務上の負担を考慮したものといえます。

 

しかしながら、過去の数値の再計算が必要となり、場合によっては複雑な実務上の処理が必要となる遡及適用に対し、財務諸表の組替えはそれほど複雑な計算を要しないことが一般的であり、このため、実務上不可能な場合として財務諸表の遡及適用が認められるケースは限定的であると思われます。

 

 

3.表示方法の変更に伴う手間を省くために実務上留意するポイント

 

毎期の財務諸表の作成時に、表示方法の変更がしばしば行われると、実務上の負担が増すことになります。

 

例えば、数値が少額の科目がある場合、他の科目と合計して表示することが多いですが、次期以降にその科目の金額が増加した場合、別掲することになる可能性があります。

 

このため、次期以降の予測(当期に他の科目と合計したものが来期に別掲が必要とならないか等)についてもある程度考慮したうえで、表示方法を変更するかの判断を行う必要があります。

 

また、過去の財務諸表の組替えを行う場合、過去の数値について詳細な資料が必要となる可能性があります。過去の資料の保存についても、充実させていくことが求められます。

 

 

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【関連記事】

 

第1回目:過年度遡及修正会計基準の概要

第2回目:会計方針の変更があった場合の取扱い

第3回目:表示方向の変更があった場合の取扱い(今回)

第4回目:会計上の見積もりの変更があった場合の取扱い

第5回目:誤謬があった場合の取扱い

第6回目:過年度遡及修正の開示

 

 

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