そもそも “内部統制” って何?

今回は、弊社オリジナルの連載特集【内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務】第2回目をお届けいたします。

J-SOX対応でお困りの方や、省力化を図りたい方は

内部監査支援、J-SOX対応支援

この連載は、内部統制報告制度(J-SOX)についての解説を行うことを目的としていますが、その前に、そもそも “内部統制” って何だろう、という点に疑問があるかと思います。そこで、今回はまず、 “内部統制” とは何か、という点について簡単に解説したいと思います。

目次

内部統制の4つの目的

内部統制は、経営者が組織内に用意する企業統治(コーポレートガバナンス)のための仕組みのことをいいますが、以下の4つの目的を達成することが狙いです。

  • 業務の有効性及び効率性を確保すること
  • 財務報告の信頼性を確保すること
  • 事業活動に関わる法令等を遵守すること
  • 会社の資産を保全すること

なお、内部統制は、以下で述べる限界があることを前提としているため、上記4つの目的の達成を『絶対的に』保証できるものではなく、組織、とりわけ内部統制の構築に責任を有する経営者が、『4つの目的が達成されないリスクをできるだけ抑える』ことを目的としているにすぎません。

とはいえ、仮に4つの目的が達成されない場合、

  • 業務が非効率で無駄が多くなり会社の経営状態が悪化する
  • 財務報告にウソを記載し、粉飾決算で証券市場から締め出されてしまう
  • 法令違反を犯し、不祥事が明るみとなり会社の存亡の危機となる
  • 事業運営に必須な高額資産が劣化し、事業が継続できなくなる

といったように、会社の存亡の危機となりうる重要な問題となってしまいます。その意味で、「4つの目的が達成されないリスクを低減させるための仕組みを組織(会社)内に設けるということ」(内部統制を整備、運用すること)はいずれの会社にとっても重要なことだと言えそうですし、そのレベルはできるだけ高く保持したいものです。

そして、4つの目的はそれぞれが固有の目的であるものの、同時に達成すべき目的であって、ある目的について他のどれかの目的を犠牲にして達成するものではない点留意が必要です。

例えば、業務を効率的に行えるからといって、保存期限切れの商品を販売するなど、法令等のルール違反を犯してはなりません。

まぁ、まともな経営者であれば内部統制の構築は会社経営上、必須である点ご理解いただけるのではないでしょうか。

(例えば、当たり前のことながらも「保存期限切れの商品を売ってはダメ」というルール作りをするのも立派な内部統制です。)

さらに、内部統制というと、堅苦しいイメージが先行しがちですが、上記のように整理してみると、当たり前のことを当たり前のように進めれば、必然的に内部統制は整っていきそうだということもご理解いただけたのではないでしょうか。

内部統制という言葉の堅苦しさに、多くの方がかまえてしまうようですが、その内容を紐とけば、どうってことありませんね。

ところで、内部統制の概念はご理解いただいたかと思いますが、実は上記の4つの目的はそれぞれテーマが大きすぎます。それぞれのテーマをブレークダウンして、一つ一つの細かいテーマを洗い出していく作業が必要になるでしょう。そして、それらの細かいテーマについて内部統制を設定していくのが実務上の手順となります。

会社によって業種・業態・規模が異なりますので、細かいテーマはバラバラかと思いますが、それらの細かいテーマをきちんと洗い出し、それらのテーマに即した内部統制をそれぞれ構築していくことで、4つの目的が最終的に達成されていきます。

一概に細かいテーマの具体例を出すことはできませんが、事前にテーマを洗い出し、それに関する内部統制を構築していくことで、不祥事やリスクを回避することができるようになるでしょう(必要であれば個別にご相談ください)。

なお、4つの目的のうち「財務報告の信頼性を確保すること」のための内部統制にフォーカスし、当該大テーマをブレークダウンして細かいテーマを出しながら、具体的な内部統制を構築、運用することについて定めれているのがJ-SOXです。

ちょっと最後は重くなってしまいましたが、次回以降のJ-SOX実務についての記載をお読みいただきながら、内部統制をどうやって構築していくかのイメージを持っていただければと思います。今回もお読みいただきありがとうございました。

【参考:内部統制の限界】

  • 内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある。
  • 内部統制は、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定形的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。
  • 内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益との比較衡量が求められる。
  • 経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがある。

J-SOX連載

第1回 内部統制報告制度(J-SOX)って何?
第2回 そもそも“内部統制”って何? (今回)
第3回 我が国の法律で求められている“内部統制”
第4回 J-SOX全体像(J-SOX対応実務①)
第5回 全社的内部統制のポイント(J-SOX対応実務②)
第6回 決算財務報告統制のポイント(J-SOX対応実務③)
第7回 業務処理統制のポイント(J-SOX対応実務④)
第8回 RCM(リスクコントロールマトリクス)の作成方法(J-SOX対応実務⑤)
第9回 整備状況の評価方法(J-SOX対応実務⑥)
第10回 コンサルタントやツールの活用法(J-SOX対応実務⑦)
第11回 監査法人が行う内部統制監査への対応(J-SOX対応実務⑧)
第12回 運用状況の評価方法(J-SOX対応実務⑨)
第13回 サンプル抽出についての留意点(J-SOX対応実務⑩)
第14回 開示すべき重要な不備について(J-SOX対応実務⑪)
第15回 不備金額の集計方法(J-SOX対応実務⑫)
第16回 経営者による内部統制報告書の作成方法(J-SOX対応実務⑬)

【オリジナルレポート】

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この記事を書いた人

公認会計士・税理士
監査法人トーマツでのIPO支援業務などを経て現在に至る。
企業の役員、アドバイザーに就任し、主に財務面からの経営戦略の立案・実行支援や管理体制の構築支援を中心に各種コンサルティング業務を提供。
バリュエーション業務の実績多数。

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