運用状況の評価方法(J-SOX対応実務⑨)

内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務 | 2013年2月24日

今回は、弊社オリジナルの連載特集【内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務】第12回目をお届けいたします。

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整備状況の評価(第9回参照)により、リスクを低減させるための有効な内部統制が整備されていることが確かめられたら、経営者は、その内部統制が適切に運用されているかを判断するため、運用状況の評価を実施します。

 

 

今までのおさらいも兼ねて、今回は下記設例を用いて解説していきます。

 

 

【リスク(例)】
売上高の会計システムへの入力金額が誤るリスク

 

 

【上記リスクに対応する内部統制(例)】
会計システムへの売上の入力金額が正確であることを確かめるために、週に一回、経理部において、経理部長が、請求書と会計システムの入力データを照合し、その証跡として、会計システムから出力された伝票に押印する

 

 

上記内部統制が整備(設定)されていることを確かめるのが整備状況の評価手続きです。通常、経理部長への質問や、ウォークスルー(業務フローにのっとり、1件ずつ内部統制の証跡をチェックする)の一環として、実際の伝票への押印状況を確認することが評価手続きとなるでしょう。

 

 

一方、運用状況の評価手続きでは、整備状況の評価で有効とされた内部統制が、実際の業務できちんと運用されているかをチェックします。整備状況の評価手続きをさらに深堀していく作業が必要となり、下記手順で実施することが効率的でしょう。

 

(1) 評価手続の決定(事前準備)
(2) サンプリング方法の決定(事前準備)
(3) 運用状況の評価手続の実施
(4) 運用状況の評価

 

 

(1)評価手続の決定

 

運用状況を評価する手続きには質問、観察、調査(関連文書の閲覧や、内部統制の実施記録の検証)、再実施があります。これらの中から、統制が意図したとおりに運用されているという確証を得るのに役立つものを選択して、あるいは複数を組み合わせて、テストを実施していくこととなります。

 

上記の設例ですと、評価手法は「経理部長の押印があることを確かめる」手続きを選択するのがベストかもしれません(調査)。
評価手続は、通常、内部統制が以下の点を満たしているか否かを確認することを目的とし実施します。

 

➣ 内部統制は文書化されたとおりに運用されているか。
➣ 内部統制は、適時に適用されているか。

 

一般的に、評価手続から得られる保証の程度は、質問、観察、調査、再実施の順に強くなるといわれています。保証の程度が強い手続きを実施する場合は、弱い手続きを実施する場合に比べて、手続きに時間と費用を要するのが通常です。

 

評価手続を決定するにあたっては、どの程度の強さの証拠が必要なのかを吟味して、この目的を効果的・効率的に達成する評価手続を選択する必要があるでしょう。

 

 

(2)サンプリング方法の決定

 

内部統制の運用状況については、全件評価することはできないので、サンプルを抽出し、当該サンプルに対し評価手続を実施します。サンプリングに関しては、内部統制の重要性、煩雑さ、頻度、担当者が行う判断の性質等を考慮して決定します。なお、内部統制実施基準には、日常反復継続する取引について、統計上90%の信頼度を得るには、評価対象となる内部統制ごとに少なくとも25件のサンプルが必要となる旨の記載があります(サンプリングについての詳述は第13回に委ねますが、上記例だと週次の内部統制なので「5件」等、内部統制の内容によってサンプリングの件数等は異なります)。

 

一般的に、経営者が実施するサンプリング方法や評価手続が監査法人の内部統制監査に利用できるレベルのものであれば、監査法人による監査対応の負担が減る可能性があります。そのため、経営者は、サンプル件数やサンプル抽出方法等のサンプリング方法について、監査法人と積極的に協議を行うことが望ましいでしょう。

 

 

(3)運用状況の評価手続の実施

 

評価対象である内部統制に対する評価手続の手法、サンプリング方法が決定したら、実際にサンプルを抽出し、評価手続を実施していきます(作業)。内部統制にエラーが検出された場合、サンプルを追加して評価手続の範囲を広げること等を検討します。

 

 

(4)運用状況の評価

 

運用状況の評価手続の結果を受けて、内部統制が文書化されたとおり実際に有効に運用されているか否かを判断することになります。なお、内部統制が文書化されたとおりに運用されているかどうかは、評価手続の対象となる内部統制ごとに判断します。

 

運用状況の評価手続の結果、ルール外の事項があった場合には、内部統制が有効でない可能性がありますが、内部統制の運用の不備の有無は、ルール外の事項の検出件数などをもとに判断されます。仮に不備と判断されれば、不備あるいは要改善事項として記録します。なお、不備がある内部統制を補う別の内部統制(補完統制)が存在し、リスクを十分低減していると判断されるものであれば、当該内部統制の運用状況の不備は、「開示すべき重要な不備」にはなりません(詳述は第14回第15回に委ねます)。

 

 

【運用状況の評価を実施するタイミングについての留意点】

 

ところで、評価時点(期末日)における内部統制の有効性を判断するには、適切な時期に運用状況の評価を実施することが重要です。全ての内部統制の評価を期末日に行った場合、ボリュームが多すぎて評価が終わらない可能性があるため、期末日前の適切なタイミング(期中)で順次行っていくことが現実的だといえます。

 

ただし、運用状況の評価を期中に実施した場合、それはあくまで期中時点の評価となるため、当該内部統制が期末日まで有効に機能していることを追加で検討する必要があります(ロールフォワード手続)。ロールフォワード手続は、運用状況の評価を実施した日から、期末日までの期間に内部統制に変更がないことを確かめるために担当者へ質問を行うことや、必要に応じてサンプルテストを追加で行うといったものが考えられます。

 

上記実施のタイミング(評価計画の策定のタイミング、サンプルに対する評価手続を実施するタイミング(時期をずらして何度か実施)等)も加味し、運用状況の評価手続を進めて行くのが望ましいでしょう。

 

 

では、今回はこの辺で失礼いたします。お読みいただきありがとうございました。

 

 

第1回 内部統制報告制度(J-SOX)って何?
第2回 そもそも“内部統制”って何?
第3回 我が国の法律で求められている“内部統制”
第4回 J-SOX全体像(J-SOX対応実務①)
第5回 全社的内部統制のポイント(J-SOX対応実務②)
第6回 決算財務報告統制のポイント(J-SOX対応実務③)
第7回 業務処理統制のポイント(J-SOX対応実務④)
第8回 RCM(リスクコントロールマトリクス)の作成方法(J-SOX対応実務⑤)
第9回 整備状況の評価方法(J-SOX対応実務⑥)
第10回 コンサルタントやツールの活用法(J-SOX対応実務⑦)
第11回 監査法人が行う内部統制監査への対応(J-SOX対応実務⑧)
第12回 運用状況の評価方法(J-SOX対応実務⑨)(今回)
第13回 サンプル抽出についての留意点(J-SOX対応実務⑩)
第14回 開示すべき重要な不備について(J-SOX対応実務⑪)
第15回 不備金額の集計方法(J-SOX対応実務⑫)
第16回 経営者による内部統制報告書の作成方法(J-SOX対応実務⑬)

 

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