滞留・処分見込みの棚卸資産の期末評価

棚卸資産会計基準の解説 | 2014年6月10日

今回は、弊社オリジナルの連載特集【棚卸資産会計基準の解説】第3回目をお届けいたします。

 

 

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1.はじめに

 

通常の販売目的で保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合は、収益性が低下しているものとして、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とするのが原則となります(棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)、以下、「棚卸資産会計基準」、7項)。

 

しかしながら、棚卸資産の仕入時からの市況等の変化により、棚卸資産が販売や製造等の用に供されず滞留している場合や、いずれにも供される見込みがなく処分される可能性が高い場合は、営業循環過程から外れた棚卸資産として評価が行われることになります。

 

 

 

2.営業循環過程から外れた棚卸資産

 

①  滞留資産

営業循環過程から外れた棚卸資産とは、販売や製造等の用に供されることなく、長期間に渡り保管されている棚卸資産が該当します。棚卸資産会計基準等では具体的な期間等は例示されていませんが、実務上は1年以上払出が行われていない資産を滞留資産とするなど、具体的な期間を社内規定で規定することが一般的です。また、棚卸資産の各品目の各残高と各売上高(又は出庫金額)の比率である回転率を求め、一定の回転率を下回った資産を滞留資産として区分する方法も実務上広く行われています。

 

回転率 = 売上高(又は出庫金額) ÷ 棚卸資産残高

 

ここで用いられる棚卸資産残高としては、期末残高を用いる場合と、期首残高と期末残高の平均を用いる場合の2通りの方法があります。

 

②  陳腐化した資産

営業循環過程から外れた棚卸資産には、市況の変化等で滞留している棚卸資産のほか、物理的要因で品質変化や劣化等が進み、販売や製造等に使用することが出来なくなった棚卸資産も含まれます。これらの棚卸資産については本来の用途で使用することが出来ないことから、一般的に評価替えが必要となります。評価額としては他の用途で使用可能な場合には、その際の売却価額等を基に評価することになり、また処分する場合は処分見込価額をゼロとして評価することが一般的です。

 

 

 

3.合理的に計算された価額を用いることが困難な場合

 

営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産については、資産は市場価格を求めることが困難である場合もあり、又、市場価格が存在したとしても、その価格により販売できない場合も考えられます。このため、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するように処理することとされています(棚卸資産会計基準9項)。

 

・  帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法

・  一定の回転率を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

 

これは、実務上、このような資産は陳腐化していることが多く、保守的な会計処理を行うことが妥当であるという考えに基づきます。しかしながら、棚卸資産の期末価額を過大に切り下げることは、次期において利益の過大計上に繋がるおそれがあることから、切り下げる場合も合理的な論拠が必要であるといえます。

 

 

 

4.実務上の留意点

 

営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産を認識する際は、通常はそれらの棚卸資産を取り扱っている営業部門・購買部門又は製造部門等の現業部門において社内規定等に基づき、営業循環過程から外れているか否かの判定が行われます。しかしながら、これらの現業部門では楽観的な予測に基づき判定が行われる可能性もあり、この場合、棚卸資産の期末価額が過大に計上されるおそれがあります。

 

これらを防ぐためには、営業循環過程から外れた棚卸資産の定義を、社内規定で明確化するとともに、現業部門が行った判定結果を経理部門等の管理部門がチェックすることが、内部管理上求められます。

 

また、通常は期末時に行われる棚卸の際に滞留資産や劣化資産がないかについて、注意することが必要となります。

 

では、今回はこの辺で失礼いたします。お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

【関連記事】

 

第1回目:たくさんある!棚卸資産の計算方法

第2回目:通常の販売目的の棚卸資産の期末評価

第3回目:滞留・処分見込みの棚卸資産の期末評価(今回)

第4回目:トレーディング目的で保有する棚卸資産

第5回目:棚卸資産の会計処理のその他の留意点

 

 

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